映画監督・山下敦弘とおくりバント会長・高山洋平が10年以上通い続けたリラックスできる場所
Writer:いちじく舞
映画監督・山下敦弘とおくりバント会長・高山洋平が10年以上通い続けたリラックスできる場所-アイキャッチ

2024年3月に公開された、リフレッシュデバイスstonの“大仕事をこなした気になれる”3本のWEB CM。映画監督の山下敦弘さんと株式会社おくりバントによって手がけられた本CMは、Xを中心に話題を呼びました。聞けば、山下さんとおくりバント会長の高山さんは10年来の友人なのだとか。出会ったのは、お二人がリラックスできる場所でもある中野のバー「バカフェ」。今回はこの「バカフェ」で、お二人がどのように親交を深めたのか、仕事とプライベートの線引きについて、WEB CM制作秘話などを語っていただきました。

山下敦弘(やました のぶひろ)

山下 敦弘(やました のぶひろ)

映画監督。1999年、卒業制作作品「どんてん生活」がゆうばりファンタスティック映画祭のオフシアター部門グランプリを受賞。2005年の「リンダ リンダ リンダ」が好評を博し、2007年の「天然コケッコー」では報知映画賞最優秀監督賞を最年少で受賞。ほか「苦役列車」「もらとりあむタマ子」「超能力研究部の3人」「味園ユニバース」「オーバー・フェンス」「ぼくのおじさん」「1秒先の彼」など多くの作品を手がけ、2024年公開の「カラオケ行こ!」は、熱狂的なファンを生む話題作となった。

高山洋平(たかやま ようへい)

高山 洋平(たかやま ようへい)

広告制作会社の株式会社おくりバント会長。投資用不動産の営業からキャリアをスタートした後、株式会社アドウェイズに入社し営業成績を上げ統括部長に昇進。5年の駐在を経て帰国後、子会社おくりバントの社長に就任。著書に「ビジネス書を捨てよ、街へ出よう プロ営業師の仕事術」。近年ではワールドJポップ専門DJマリアージュとしても活躍。



あの場所に行けば友達に会える。10年以上通ったのは後にも先にもこの店だけ

中野のバー「バカフェ」のカウンターに座る山下敦弘と高山洋平
明るい場所で会うのが久しぶりでソワソワする二人


高山:山下さんと会うのって、だいたい夜の飲み屋だから昼に会うと変に緊張しますね。

山下:パンちゃん(※)とは最近でこそ一緒に仕事もしたけど、基本的にはお互いシラフの状態で会うことって少ないもんね。

高山:そうそう。俺たち昼に会わない方がいいのかな、という感覚になるというか。ドキドキします。

山下:なんか照れ臭いよね(笑)

※ 高山さんが仲間内で呼ばれているあだ名。パンダに似ていることが由来だそう。

中野のバー「バカフェ」の外観
中野のバー「バカフェ」。事前に鍵を貸してもらい入店したところ、カウンターの床にぴったり挟まった状態で店員が寝ていた


── それくらい普段はこの場所でリラックスして過ごされてるんですね。高山さんはもともと山下監督のファンだったとか。

高山:出会う前からずっとファンでした。監督の作品はほとんど見てるんじゃないかな。特に細かいディテールの演出が好きで。例えば、「ばかのハコ船」で主人公の彼女がベースを弾くシーンがあるんですけど、そこで聖飢魔IIの曲をチョイスしていたり……。

山下:あった、あった。よく覚えてるね(笑)

高山:あとは主人公が言う「ビタミンB1では飽き足らず」の“飽き足らず”という絶妙な言い回しにも感動したり。それ以降、気に入って自分も営業で使ったりしてましたもん。「当社は効果が良いだけでは“飽き足らず”、お値段も安くしてます」とか言って。今でも使ってます。

山下:あはは(笑)

高山:最近の作品でいうと「カラオケ行こ!」で、綾乃剛さんが乗る車にトヨタのセンチュリーを選んでるところとか、グッときましたね。

山下:ちなみに、トヨタのセンチュリーは映画の影響でトミカのミニカーがめちゃめちゃ売れたみたいだよ。

中野のバー「バカフェ」のカウンターに座り水を飲む山下敦弘と高山洋平
「バカフェ」のカウンターで初めて水を飲む二人


高山:山下監督はとにかく憧れの人だった。だからバカフェで紹介されたとき、普通に中野とかで飲んでるんだって衝撃でした。

山下:それが今から10年前だよね。

高山:そうですね、俺がバカフェに通い始めたのが10年前だったから。山下監督はもっと前から通ってますよね。

山下:12年くらい前かな。後にも先にも、10年以上通ってる店はバカフェくらい。

中野のバー「バカフェ」のカウンターで語り合う山下敦弘と高山洋平
このカウンターで10年間語り合った


高山:俺は同じ場所に10年以上住んだのすら初めてです。それも、街に通いたくなる飲み屋がたくさんあるからですね。

山下:パンちゃんと会う店はこの近辺だと4軒くらいあるよね。

高山:監督もほぼ毎日飲み屋にいますもんね。

山下:そう。だからコロナの時期はキツかったな。飲み屋では酒の味を楽しんでるわけじゃない、って気付いた。

高山:そう。人に会いに行ってるんですよね。

友達と仕事をすることでリラックスできる場所を失う可能性も

仕事について語り合うお二人


── お二人は普段バーでどんなお話をされるんでしょう。

山下:パンちゃんとは、過去に放映されてたCMの話なんかをたくさんしたよね。昔のCMは情報らしい情報を伝えていないものもあって、それが面白い。

高山:そうそう、荒野で馬に乗っているシーンだけだったり、なぜか砂漠でピエロが踊っていたり。それで、最後に商品がでて終わり。そういうのが今でも記憶に残ってるんですよね。

山下:それと、CMって映画と違って監督の名前が残らないのがいいよね。いい意味でそこに責任が生じていないというか。

高山:確かに、強烈に印象に残ってるCMも誰がつくったかまでは分からないですもんね。

中野のバー「バカフェ」のカウンターに座りstonでリラックスする山下敦弘と高山洋平
stonを吸う山下監督。喫煙者の箸休めにもおすすめ


山下:とはいえ、パンちゃんに言われるまでCMって意識して見たことなかったな。中央線って意外と映画人少ないから、飲み屋に行ってもこういう映画以外の話ができるのが嬉しい。飲み屋で仕事の話するのはなるべく控えたくって。

高山:そうなんですね。逆に俺は仕事の話をするどころか、仕事するのもほとんど飲み屋で会った友達です。

山下:俺はほとんどしないかも。友達と仕事するって、それがきっかけで関係性が悪くなる可能性もあるし慎重にならない?

中野のバー「バカフェ」で飲みについて語る高山洋平


高山:確かに、会社立ち上げて最初の方は失敗して険悪なムードになったこともあるな。まあ、それは自分の力不足が理由でしたけど。

山下:結構リスクあるよね。

高山:そうですね。同時に自分のリラックスできる場所も失っちゃうってことですもんね。

山下:そうそう。おくりバントに映画ポスターの制作を依頼したのも、出会ってから5年経った後だもんね。

高山:そうですね。あのときは嬉しかったな。

2018年に公開した映画「ハード・コア」のポスター
これが巷で噂の山下監督とおくりバントの初仕事



リスペクトがあるからこそ、出会って仕事をするまでに10年かかった

中野のバー「バカフェ」はお二人にとってリラックスできる場所


── ポスター制作から更に5年後、お二人はstonのCM制作でご一緒するわけですね。

高山:山下監督に関しては、俺がファンだったっていうのもあって、気軽に仕事を依頼できなかったんですよ。依頼するまでに10年かかりました。

山下:俺も俺で、おくりバントの制作した映像を見せてもらったりもしてたけど、すごいな、俺にはできないなと思ってた。

高山:ありがとうございます。

山下:でもここ最近、映画以外にも何本かCMを撮らせてもらったことで知見が貯まってきて、今このタイミングだったらできるかも、と思って引き受けたんだよね。

高山:山下監督に引き受けてもらえるって決まったとき、思わず親会社に報告しました。みんな喜んでくれて。依頼するのも、メッセージじゃ微妙なニュアンスや熱量が伝わらない気がして直接話したかったから、監督を飲み屋に探しにきました。そういうときって、ちゃんと一発で会えるんですよね。

▲ stonのWEB CMより「宇宙怪獣バドラを倒して、世界から褒められた気になれる動画」


山下:事務所に説明するの大変だったよ(笑)CMの内容も飲み屋で話したことが反映されてるよね。

高山:そう。まず怪獣をだしたいっていう話になったんだけど、それも飲み屋で宇宙怪獣の話をしてたからですよね。

山下:それが、映画館で某怪獣映画の前に流れたりしてるんだもんね。

高山:いやあ、感慨深いです。

▲ stonのWEB CMより「ラーメンをたくさん食べて褒められた気になれる動画」


山下:「ラーメンバージョン」も、パンちゃんが健太(※)のラーメンを食べたいから立案した、みたいなところはあるよね。

高山:そう。香盤表に「ラーメン(を食べる時間)」って書いたら流石に却下されましたね。

山下:CM撮影ってもっとピリピリしてるもんだけど、あの現場は本当リラックスしてできたよね。

高山:うちはピリピリしないって決めてるんです。会社立ち上げて最初2年くらいは一応ピリピリしてみたけど、良いことないって気付いてやめました。今は常にリラックスしてます。

山下:なるほど。

※ 撮影現場となった高円寺のラーメン屋

自身のリラックスする瞬間について語る山下敦弘


── 山下監督がリラックスできる瞬間はありますか?

山下:リラックス……。

高山:映画監督って撮影が終わっても編集が残ってるし、公開された後もお客さんの反応をみたり、心休まる瞬間ってなさそうですよね。

山下:あ、家で酔っ払って寂しくなると、サブスクで自分の過去作を探して観て「結構いい映画だな……」って自画自賛したりはしてますね。

高山:それが癒されるんだ。

山下:そう。で、履歴を消し忘れて妻にバレちゃう。

高山:(笑)

次は、砂漠でベールを纏ったダンサーが躍るCMを撮りたい

中野のバー「バカフェ」のカウンターには変わった置き物がたくさん
多種多様な面々のなか、どうにも気まずそうなston


── お二人の次回作の展望は?

山下:とにかく海外ロケをしたいって話してたよね。市街地じゃなくて、エーゲ海とか砂漠とかで。低予算でいいから。

高山:そうそう。砂漠でベールを纏ったダンサーが一人で踊ってるシーンみたいなのが撮りたい。

山下:で、その撮影道中もCMにする。

高山:現地のコーディネーターがテキトーでトラブルになるみたいな様子まで全部ひっくるめたCM。つくりたいですよね。

── バーでお話されていた古き良きCMにお二人のエッセンスが足された作品になりそう。次回作も期待しています!

Writer

いちじく舞

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