プロレスラー・小島聡 × ミュージシャン・NAOKI(LOVE PSYCHEDELICO)の“リラックス対談” 《前編》。2人が築いてきた15年以上の思い出に迫る
Writer:高山 諒
プロレスラー・小島聡 × ミュージシャン・NAOKI(LOVE PSYCHEDELICO)の“リラックス対談” 《前編》。2人が築いてきた15年以上の思い出に迫る - アイキャッチ

忙しい日々の中で、働く人々はどのように頑張っているのだろうか。仕事観やスキマ時間の過ごし方などを、リラックスしながら対談していただく『リラックス対談』。

今回登場していただくのは、新日本プロレス所属プロレスラーの小島聡選手と、バンド・LOVE PSYCHEDELICO(ラブサイケデリコ)のNAOKIさん。

音楽とプロレスという別々なフィールドで活躍するお二人。しかし実は15年以上の仲で、家族ぐるみの付き合いなんだとか。
対談の前編は、運命的な出会いから、リラックスタイムの過ごし方、そしてお二人に共通するプロレスについて。

プロレスラー・小島聡選手のプライベートでの意外な一面やミュージシャン・NAOKIさんのプロレス愛が詰まった対談となりました。

小島聡さんプロフィール写真

小島 聡

1991年、新日本プロレスでデビュー。天山広吉とのタッグ、”テンコジ”でIWGPタッグ王座を獲得するなど、活躍を見せる。2002年に新日本プロレスを退団し、全日本プロレスに移籍。2005年には三冠ヘビー級王座を獲得し、さらには新日本プロレスで開催された天山広吉とのIWGP・三冠のダブルタイトル戦を制し、史上初の四冠王者となる。2010年に全日本プロレスを退団、約1年のフリー期間を経て再度新日本プロレスに入団した。2022年4月30日の両国国技館大会で、丸藤正道のパートナー”X”として久々のNOAHマットに登場した。同年6月のCyberFight Festival 2022で、潮崎からGHCヘビー級のベルトを奪取、史上4人目のメジャー三団体のシングルベルトを制覇する”グランドスラム”を達成した。

NAOKIさんプロフィール写真

NAOKI (LOVE PSYCHEDELICO)

2000年4月21日、シングル『LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~』でデビュー。2001年1月に発表された1stアルバム『THE GREATEST HITS』は200万枚、翌年2002年1月に発表された「LOVE PSYCHEDELIC ORCHESTRA」も100万枚を超え、2作連続ミリオンとなる驚異的なセールスを記録。現在までにシングル14枚、オリジナルアルバム8枚をリリース。NAOKIの卓越したギターテクニックとKUMIのヴォーカルスタイルが、印象的なリフ、日本語と英語が自由に行き交う歌詞によって、LOVE PSYCHEDELICO独自の音楽スタイルを確立している。2023年9月に最新シングル「All the best to you」を配信リリース。2024年5月にはライブ映像作品「Premium Acoustic Live “TWO OF US” Tour 2023 at EX THEATER ROPPONGI」のリリースが決定。現在ビルボードライブにて「Premium Acoustic Live “TWO OF US” Special Night」を開催中。



偶然が重なる運命的な出会いが15年以上の付き合いに

小島聡さんとNAOKIさんの対談風景。小島さんは笑顔で語る


── お二人は15年以上の仲だとお伺いしましたが、まずその出会いからお伺いしてもよろしいでしょうか?

NAOKI:まず前提を話させてもらうと、僕がプロレスの大ファンなんですよ。子どもの頃から柔道をやっていたのもあり、格闘技に対しては特別な思いがあって。
プロレスにハマったのは小学生ぐらいで、初代タイガーマスクがブームになるちょっと前ぐらいかな。当時はアンドレ・ザ・ジャイアントとか、スタン・ハンセンとか……ってこれどこまでプロレスの話をしていいんですか(笑)?

小島:とにかくNAOKIさんはプロレスが大好きですよね。

NAOKI:そうなんですよ。DVDやプロレスグッズが家に沢山あって、見たいカードがあれば地方の試合にもよく観に行ってます。かけてるお金は音楽よりプロレスの方が多いかもしれない(笑)。そんな僕にとって、小島さんはスター選手の一人なわけですよ。

小島:そんなそんな(笑)。

NAOKI:小島さんとの出会いはLOVE PSYCHEDELICOが2007年に出した『Golden Grapefruit』というアルバムのキャンペーンで札幌に訪れたとき。札幌ってコンパクトな街なので、CDショップやラジオ局を徒歩で周れるんです。市内を歩いていると、時計台のところになんか見たことがある人がいるなと思って(笑)。それが小島さんだったんです。

小島:僕はプロレス雑誌の撮影をしていたんですよ。

NAOKI:一緒にいたボーカルのKUMIに「小島選手がいる!」って、しばらく遠くからモジモジと見ていたんです(笑)。



── 憧れるあまり、なかなか話しかけられなかったんですね。

NAOKI:そしたらKUMIがスタッフのカバンから新譜を取り出して、「これ持って挨拶しておいでよ!」って僕を促してくれて、それで小島さんにご挨拶させていただきました。



── 声をかけられた小島さんはそのときどんな心境だったのでしょうか?

小島:LOVE PSYCHEDELICOというバンドの名前はもちろん知っていましたが、音楽は正直そこまで詳しくなかったんですよね。そのあとも、事務所にCDやグッズを届けていただいて、それを家内に話したら、「えぇ!」ってびっくりしていて。というのも、家内がLOVE PSYCHEDELICOのファンだったんです。それをきっかけにご飯に行きました。あれは娘が生まれたばかりだったので……もう18年も経ちますね。

NAOKI:そうですね。今では家族ぐるみのお付き合いをさせていただいています。小島さんの娘さんが音楽をやっているので、僕がアドバイスをさせてもらったり、たまに進路相談ものっています(笑)。



── いくつかの偶然が重なって、今こうして家族ぐるみの仲になっているのですね。

リング上のイメージから一転、プライベートでの意外な姿

LOVE PSYCHEDELICOのNAOKIさん


── NAOKIさんは小島さんのことをスターとして見ていたとおっしゃっていましたが、実際にお会いしてからの小島さんの印象はいかがでしたか?

NAOKI:あのときの小島さんはリング上ではヒールとして大暴れしていた時期でした。ただ、僕はデビュー当時からの小島さんの活躍を知っているので、たとえヒールレスラーだろうと、「この人は絶対にいい人だ」という確信が最初からあったんで、僕の中では会う前も会ってからもイメージ通りの人なんですよね。小島さんはね、リングに立ってスポットライトを浴びると今でも筋肉にくっきり影があって、肉体が輝いて見えるんです。日々ストイックにトレーニングしているのがわかりますよね。若いときだけじゃなくて、これだけキャリアを重ねた今でもそうですからね。それだけプロレスに真摯に向き合っている人が街で声かけられたくらいで「うるせえ馬鹿野郎」なんて絶対言ってこないだろうと思ってましたんで、最初の出会いから話しかけやすかったですよ(笑)。

小島:さすがにプライベートでそんなこと言わないですよ(笑)。

NAOKI:それにプロレスラーの方って豪快に飲み食いするイメージがあったんですが、はじめてレストランに一緒に行ったとき本当に腰が低くて食事も人並みで(笑)、穏やかで紳士な方だなと思いましたね。今も一緒に焼肉を食べにいったら、僕の方が多く食べていて、小島さんはササミしか食べないとかもありますからね(笑)。



── 小島さんから見たNAOKIさんはどのような印象でしたか?

小島:NAOKIさんは想像以上にプロレスが好きな方で、身内しか知らないような話も知っていて、業界人と話しているみたいなんですよ。歳も近いので、僕が幼少期から観てきたプロレスの話もできるし、なにより純粋にプロレスを愛してくださっているのが嬉しいんですよね。

NAOKI:当時の第一印象からお互いあまり変わってないかもしれないですね。小島さんはずっと謙虚で優しい小島さんだし、僕はずっと「あの試合はこうだった」とプロレスの話ばかりしています(笑)。

好きが根底にあるからこそ、プライベートも仕事もシームレスに繋がっている

小島聡さんプロフィール写真


── ひと休みのためのプロダクト「ston」にちなんで、お二人の趣味や休日にしていることなど、リラックスタイムについても教えてください。

NAOKI:小島さんって趣味とかあるんですか?

小島:趣味か……。あまりないんですよね。リラックスタイムといえば、食べることが好きなので、ネットで見つけたお菓子やパンを買いに行くぐらいですかね。プロレスラーはいろんな地域で試合をするので移動が多いのですが、移動中も何かとお菓子を食べてますね。
あとはチワワをずっと飼っているんですけど、犬といるときの時間、これだけは何にも勝てない最高のリラックスタイムですね。犬の匂いを嗅ぐとか、同じ空気を感じているだけでもすごく幸せを感じるんですよ。

NAOKI:やっぱりチワワが特別なんですか?

小島:おっきい犬だとね、怖いんですよ。今は2匹のチワワを飼っているのですが、やっぱり僕はチワワが大好きなんですよね。


NAOKI:普段あんな恐ろしい人達と試合をしているプロレスラーが大きい犬を「怖い」なんて言うんですか(笑)。でも小島さんのご家族からの情報によると、プライベートのリラックスタイムでも、プロレスを延々と見てると聞いています。

小島:そうなんですよね。僕もNAOKIさんと一緒で小学生の頃からプロレスが大好きで、今でも時間さえあれば他団体や海外の試合も観ています。「好きなもの」を仕事にしてきたから、趣味と職業が一緒なんですよね。

NAOKI:それはわかります。僕も時間ができると、結局レコード屋さんに行って楽曲を漁っているか、やっぱりプロレス鑑賞なんですよ(笑)。仕事とプライベートをきっちりと分けるタイプではなくて、まず好きが根底にあって、趣味と仕事が成り立つんですよね。

小島:仕事以外の時間もずっと音楽と触れているんですか?

NAOKI:そうですね。アルバムの制作やレコーディングで、没頭しなければならない期間はむしろ世の中の音楽を聴かなくなるんですけど、それ以外のときはスポンジのように音楽を吸収している感じですね。



── 制作やレコーディングのときに他の音楽に触れてしまうと、影響が出てくるものなんでしょうか?

NAOKI:それもありますけど、例えばビートルズとか先人の凄く素晴らしい音楽を聴いたときって、「よし俺も良い曲を作ろう」とはならないんですよ。むしろ、これだけ完成された音楽が世の中にすでにあるなら「別に自分が作らなくてもいいや」ってなってしまうんです。だから制作のときは周りの音楽を遮断して、自分の内側の世界と向き合うようにしています。ただ、そんな時期でもプロレスだけは観ていますけどね(笑)。僕らのスタジオはディスプレイが2台あるんですけど、片方は楽曲制作の画面で、片方は音を消したプロレスが流れてる時間帯が多い(笑)。

小島:やはりプロレスがいつもそばにあるんですね。

NAOKI:そうですね。小島さんとよくご飯に行くんですけど、考えてみるとプロレス以外の話ってあまりしたことないかもしれないですね。

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プロレスはいつでも命がけ。印象に残っている小島さんの試合とは


── ではこのまま、とことんプロレスの話をしていただきましょうか。これまで小島さんの試合を観ている中でNAOKIさんが特に印象に残っている試合はありますか?

NAOKI:これはね、強烈に記憶に残っている試合がありますよ。もちろん、いわゆる名試合とファンの間で語られているような、全日本プロレス時代の武藤敬司さんとの試合とか、新日本プロレスに戻ったときの棚橋弘至選手との試合とかあるんですけど、僕の印象に残っている試合は、2011年の両国国技館でやった天山広吉選手との試合ですね。

小島:あーなるほど! あの試合ですね。

NAOKI:僕は小島さんの奥さんと、娘さんと、あと当時新日本プロレスの社長だった菅林直樹さん(現・新日本プロレス会長)の4人で会場の遠くの席から観てたんですよ。
あの試合は危なっかしい場面がいくつかあって、そのたびに心配した菅林さんが座席から立ち上がって。でも試合は続いていたから僕は「大丈夫だな」と思ったんだけど、試合が終わった直後に菅林さんと奥さんが「ちょっと見てくる」って、バックヤードに急いで様子を見に行ったんですよね。



── それは心がゾワゾワとしますね……。

NAOKI:あれは小島さんをずっとそばで観てきた2人だからわかる第六感というのかな。たぶん何かを察知したんでしょう。僕は気づかなかったんですけど、試合中に小島さん眼窩底(がんかてい)骨折をしていたんですよね。それでその試合の10分後ぐらいかな、菅林さんが病院の名前が書いてあるメモを持って走ってきて、「NAOKIさん、娘さんと奥さんは今救急車で一緒に向かったから、(会場の別の席にいた)小島さんのお父さんを連れてすぐこの病院に向かって!」って。今思えば「俺は小島さんの親族なのか?」って扱いでした(笑)。

小島:たしかにNAOKIさんが僕の父親を病院に連れて行くのは、完全に親族の扱いですね(笑)。

爆笑する小島聡さん


NAOKI:話を聞いたお父さんも不安そうにしているから、「大丈夫ですよ。プロレスラーはみんな眼窩底骨折やるんです」なんて嘘ついてなだめて病院に向かった想い出です。

小島:本当はなかなかやらないですからね(笑)。

NAOKI:病院に着いたら、お通夜みたいな空気で(笑)。奥さんも娘さんも泣いてるし、小島さん本人は痛みで1ミリも動けず『明日のジョー』の最終回みたいな姿で車椅子に座っていて(笑)。命に別状はなかったんですけど、プロレスラーって本当に命を削っているんだなと思いましたね。実は試合の中盤ぐらいには骨折していたらしく、それでもそのあと7~8分間は観客にも気づかれず試合しているわけですよ。

小島:そうですね。自分でもあのときは「やばいな」とは思ったんですけど、なんとか頑張って最後まで試合したんですよね。

NAOKI:あれはプロの凄みを感じた瞬間でしたね。僕はね、その日をきっかけに小島さんだけじゃなくて、他のプロレスラーの方の試合を観るときでも、たとえ派手な技じゃなくても、一歩間違えたら大怪我をするんだと思うようになって。選手がトップロープに登るだけでも祈るような気持ちで観るようになりましたね。

小島:そうですね。僕は幸いにもプロレスラーの中では怪我が少ない方なんですが、やはりいつでも命がけでやっているという緊張感は持つようにしていますね。それは試合だけじゃなくて、トレーニングでもそうですね。

NAOKI:目の前で試合が観れる喜びと、選手お互いが無事でいてほしいという祈りと、いつも元気を分けてくれてありがとうという選手達への感謝。そんな思いが僕は常にプロレスに対してはありますね。こんなにプロレスの話をして大丈夫ですか(笑)?

── いえいえ、プロレスに対してのお互いの熱い思いが聞けて、プロレスファンにはたまらない内容になっていると思います。後編では音楽とプロレスの共通点をメインテーマにしてお話を伺っていければと思います!



3月1日公開となる、後編は音楽とプロレスというそれぞれの領域から思う、“見せ方”についてや、仕事への原動力、そして長年のキャリアを振り返って思うことなどについて話が展開していきます。次回の更新をお楽しみに……!

Writer

高山 諒