1990年生まれ千葉県出身。フリーランスのライター・編集者。とうもろこしと大学いもとものづくりが好き。最近はレーザーカッターを使ったアクセサリーをつくるのが楽しい。
2024.07.04
1月31日にマガジンハウスより発売された「そうです、私が美容バカです。」。作中では美容オタク歴25年の漫画家まんきつさんによる、美容探求の軌跡が描かれています。作中ではまんきつさんが本気でおすすめしたい美容法から、献血や漂白剤風呂などなどいわゆる”トンデモ美容”の体験談も紹介。そんな自分を労わることも追い込むこともできてしまう美容について、蓄積された知見と今の考えをまんきつさんに伺いました。
まんきつ
1975年、埼玉県生まれの漫画家。著書に、2023年にドラマ化もされ話題となった、サウナ好きが高じてサウナを舞台に描いた漫画『湯遊ワンダーランド』(全3巻・扶桑社)をはじめ、『アル中ワンダーランド』(全1巻・扶桑社)、『ハルモヤさん』(新潮社)などがある。「週刊SPA!」の人気連載『犬々ワンダーランド』が8月末に完結2巻発売予定。
険しい顔付きになってきたらサウナへ。別人のような柔和な表情に
── 失恋をきっかけに美容に目覚め、それ以降さまざまな美容法を試し続けているまんきつさん。まず、美容に目覚めて良かったと感じることは何でしょうか。
まんきつ:私、落ち込みやすいんです。本当にちょっとしたことで凹んだりして。そんなときも「でも私、肌綺麗だしな」って自分の肌が心の支えになるんです。ケアしてきて良かったなと思いますね。
── 確かに肌がめちゃくちゃ美しい……。お守りになる気持ちが分かります。今まで試されてきた美容法の中で癒しを得られた美容法は何かありますか?
まんきつ:やっぱりサウナですね。顔にけんがでてくると「サウナが足りてない」と思ってサウナに駆け込みます。サウナから出ると「人間、リラックスしたらこんなに表情が変わるんだ」って毎回驚きますね。気を付けてるのは、ドライサウナに入るとき。湿度の低い空間に長時間いると肌も髪も乾燥してしまうので、濡らして固く絞ったタオルを頭から顔までぐるぐる巻きにして入るようにしています。それである程度の湿度を保っていますね。
── ミイラルックですね。サウナから出た後はスキンケアが捗りそうです。
まんきつ:サウナには必ずシートマスクを一枚持っていくようにしていて。今ハマってるのは、「ハイドロキノン(※)」と「ヒト型幹細胞」と「アゼライン酸」が配合されているシートマスク。それをローテーションしながら使っています。
※ シミの原因であるメラニン色素の生成を抑える漂白剤
── ハイドロキノンってどちらかというと薬剤のイメージがありましたが、今はシートマスクとしても発売されてるんですね。
まんきつ:そうそう。ハイドロキノンって使用期限があったり冷蔵庫で保管しなくちゃいけなかったりするじゃないですか。それで、結局忘れてしまって期限切れを処分することになったり。でもシートマスクだったら一回こっきりで使い切れるから便利なんです。
肌が綺麗な人に街中でインタビュー。足を使って得たコスメの知見
── ご自宅のお風呂でリラックスするために使っているアイテムはありますか?
まんきつ:最近知人に、泡風呂になる入浴剤をもらったんですが、ハーブのすっごい良い香りがしてリラックスできるんです。食欲を抑えてくれる香りらしくて、モデルさんも使ってたりするみたいですね。良いお値段なので、少しずつ大事に使っています。
── 日常のご褒美という感じですね。まんきつさんはボディケアも入念にされてるイメージがあります。
まんきつ:ビタミンAとEを配合しているワセリンをひじとかかとに使っています。400円弱で買える昔ながらのワセリンで気に入ってよく使っていますね。
── お尻のざらつきにも効くんでしょうか。
まんきつ:お尻には漢方の「ヨクイニン」がおすすめですよ。首のイボを取るために飲んでいたんですが、結局イボには効かず、その代わりにお尻がツルッツルになりました。
── チェックしてみます。コスメはいかがでしょう。
まんきつ:コスメは特に下地にこだわっていて。クレ・ド・ポー ボーテの下地を3種類使い分けています。私、街で肌が綺麗な人を発見するたび「何使ってるんですか?」って聞いてまわってた時期があって。サウナとか電車とかどこでも。その結果、肌が綺麗な人はクレ・ド・ポー ボーテを使ってる確率がすごく高かった。それが分かってからずっと愛用しています。
美容の一環として血を吸わせるためにヒルの飼育を開始
── 飲尿や漂白剤風呂など、驚くような美容法も試されてきたまんきつさん。生理終わりの肌が綺麗になることから、ヒルの飼育を検討されていたのも驚きました。
まんきつ:そうそう、低血圧なので献血にはなかなか行けなくて。ちなみに、ヒルはもう飼ってますよ。
── え! 吸わせてるんですか?
まんきつ:はい。ヒルって吸い出したら2時間くらい離れないんですよ。それでお腹一杯になったらコロンって落ちる。吸うときに麻酔成分を出してるので痛くはないんです。だから動物なんかも吸われてるときに気付かなかったりする。
── 肌への影響はいかがでしょう?
まんきつ:それが、まだぜんっぜん分からないんです。ヒルもまだ小さいから、吸える血の量が限られてるからかもしれません。成長していくにつれて吸える血の量が増えていけば、肌にも影響でてくるかもしれませんね。
美容におぼれないコツは客観的な意見と心の逃げ場所を確保すること
── 今までで一番試して良かった美容法は抜歯の歯列矯正と、顔脱毛だと拝見しました。それは今も変わらず?
まんきつ:はい。抜歯の歯列矯正は歳を重ねると顔がやつれて見える可能性もあるので若い頃に試すのがおすすめですね。顔脱毛もなるべく早くやるのが良いと思います。私は今から25年前くらいにやったんですが、当時は針脱毛が主流でレーザー脱毛を施術してくれるところが少なくて。埼玉から群馬まで12回ほど通って脱毛しましたね。肌に透明感もでるし、スキンケアの浸透率が格段に良くなる気がします。ただ、当時はまだ先生も慣れてなかったのかサービス精神なのか、今では避けられる部位までレーザーをあててくれて、結果もみあげが全部なくなりました。
── 本当だ、もみあげまでツルンとされてる。これまで試した美容法のなかで後悔した美容法はありますか?
まんきつ:レーザー治療や自宅でのスキンケアのしすぎで敏感肌になってしまったことですね。レーザー治療は、肌の表面に細かい傷を付けて、再生力を使って肌のキメを整えるフラクショナルレーザーをあてていました。計8年くらいやっていて、最初の2年は半年に一度のペース、それ以降は年に一度のペースで施術していましたね。スキンケアを一番入念にしていたときは、ピーリング石鹸で洗顔したあと、個人輸入したハイドロキノンとトレチノイン(※)を併用して使っていました。
※ ビタミンA(レチノール)の誘導体。ビタミンAの50~100倍の生理活性を有する医薬品
── ターンオーバーを促しすぎたんでしょうか。現在は美容との適切な距離をとるために意識していることはありますか?
まんきつ:美容ってやりすぎると本当に分けわからなくなる瞬間ってありますよね。だから正直に意見してくれる人が周りにいると良いと思います。私の場合は「湯遊ワンダーランド」「犬々ワンダーランド」の担当編集者や毒舌な妹。「まんきつさん、今日顔白すぎないですか?」とか言われたり、「この前のインタビューでしてたリップ似合ってないよ」とか指摘されたりするんですが、それで一旦冷静になれますね。
── 客観的に判断してくれる存在がストッパーになるんですね。
まんきつ:あとこれは全てに共通することだと思いますが、心の逃げ場所を一個つくっておくことが大切だと思います。私の場合、以前はこれがお酒だった。これは全然良くなくて。今では「ちょっとダメだな」ってときはサウナに行くようにしています。ホームサウナはもちろんあるけど、本当に元気になりたいときは、新大久保の女性専用サウナ「ルビーパレス」に行ってサウナに入った後、全身垢すりとオイルマッサージをしてもらったら、新大久保駅から徒歩4分のところにある高麗参鶏湯(コウライサムゲタン)を食べる。そしたら本っ当に生き返るんです。辛いことがあっても「あれをやるんだ……」って思いながら生き延びていますね。
── 美容にも心にも身体にも良さそう……究極のリフレッシュですね。本日はありがとうございました。
企画:株式会社おくりバント
協力:富士東洋理髪店
Writer
いちじく舞