平成レトロなグッズに囲まれて癒やされるひととき。平成文化研究家・山下メロのリラックス部屋
Writer:高山 諒
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「平成レトロ」を提唱し、バブル~平成初期の庶民風俗を研究する「記憶の扉のドアボーイ」の山下メロさん。忘れられた平成文化を再発見し、私財を投じて平成レトロアイテムを保護しています。今回は「リラックス部屋」と題して、そんな山下さんのご自宅に訪問!

数々の懐かしいグッズから、山下さんのリラックス法、そして山下さんが平成レトロなアイテムを集めている理由などに迫ります。

平成文化研究家・山下メロさんプロフィール画像

山下メロ

1981年 広島県で生まれ埼玉県加須市で育つ。記憶の扉のドアボーイ。平成レトロを提唱し、バブル期を軸に昭和・平成の庶民風俗を研究。スケルトンなど透明文化、通信機器やデジタル商品、タレントショップ、ヤンキー文化、ギャル文化などを追い、当時の若者の部屋を再現した展示を行っている。他にもバブル期の子供向け観光地みやげ「ファンシー絵みやげ」を研究。日本全国へ出向いて保護活動を行い、これまでに6,000店舗を調査し25,000種を保護してきた。そのフィールドワークの出来事や調査結果を各メディアで随時発信。TBS系『マツコの知らない世界』など多数のメディア出演を通じて懐かしい文化を紹介している。著書に『ファンシー絵みやげ天国』(ケンエレブックス刊)、『平成レトロの世界』(東京キララ社刊)、『ファンシー絵みやげ大百科』(イースト・プレス刊)。『週刊プレイボーイ』(集英社)にて「山下メロの平成レトロ博物館」を連載中。



その数、約5万点。懐かしのグッズで溢れた部屋で落ち着く瞬間

山下メロさんのお部屋にはたくさんの物が


── 本日はよろしくお願いします! それにしても、この部屋、ものすごい物量ですね。

山下:私は主にバブルから平成初期の、イラストが印刷された子供向け観光地土産を「ファンシー絵みやげ」と名付け、保護しています。この家にはそんな「ファンシー絵みやげ」が約2万5,000種類ほどあります。ほかにも、平成レトロアイテムをあわせるとトータルで約5万点ほどあるんじゃないですかね。
この部屋には保護したアイテムを分類し、保管しています。

BOXに貼られたラベル


── この部屋では、「オカルト」や「TVタレント」など、ボックスごとにいろいろなラベルが貼られていますね。

山下:普段私は平成レトロアイテムの保護活動のほか、原稿の執筆をしたり、展示やテレビ番組などで部屋を再現したりしていますので、集めたものの中からニーズに合わせてピックアップする作業が多いんですよね。そのため、必要なものを必要なときに取り出せるようにしなければなりません。5万点ほどある保護品も、すぐ取り出せなかったら持っていないのと同じなので、分類は工夫しています。

ちょっと部屋を見渡していただくと……

壁には「ファンシー絵みやげ」のキーホルダーが都道府県別に並べられていた


山下:例えば、壁には「ファンシー絵みやげ」のキーホルダーを都道府県別に並べていたり……

CDラックには昔ダイソーが出していた「ザ・ゲームシリーズ」がずらり


山下:このCDラックには昔ダイソーが出していた「ザ・ゲームシリーズ」があったり……

このボックスには「ファンシー絵みやげ」のブロック万年カレンダーがたくさん入っていた


山下:このボックスには「ファンシー絵みやげ」のブロック万年カレンダーがたくさん入っていたりしますね。

── 全部細かく分類されているのですね。「ファンシー絵みやげ」のキーホルダーやカレンダーだけでも、これだけの数があるのは驚きです。

山下:「ファンシー絵みやげ」はキーホルダーやカレンダーだけではなく、湯呑み、のれん、Tシャツ、タオルなど、当時はかなりの数を出していたので、推定でも10数万種類あると思います。道のりはまだまだ長いですね。

── 今回はリラックス部屋ということで、この部屋ではどのようにリラックスしているのでしょうか?

山下:大量の物に囲まれている空間がなんだか落ち着くんですよね。土産店やリサイクルショップでは、どうしても興奮が勝ってしまう。家で保護品を整理したり、物に四方八方囲まれた隙間から窓の外の自然をみたり、そんな時間が一番リラックスしているかもしれません。

なんとなく物に囲まれている状態が自分のリラックス法と語る山下メロさん
物に囲まれながらリラックスしている山下さん


山下:コレクターの中には、自分のコレクションを眺めながら、お酒を飲むといった方もいるかもしれませんが、私はそういうタイプでもないので、なんとなく物に囲まれている状態が自分のリラックス法かもしれません。

ほかにも私がリラックスしている部屋があるので、みていただけますか?

── ほかにもあるんですね! 行ってみましょう。

こだわりのアイテムが並ぶトレンディ部屋

平成文化研究家・山下メロさんプロフィール画像


── ラッセンのジグソーパズルに、ガラス瓶、モダンな形の電話や時計、この部屋は一体どんな部屋なんですか?

山下:この部屋は私が集めたアイテムを使ってコーディネートした部屋になります。テーマは「トレンディに憧れる青年の部屋」ですね。
“トレンディな部屋”と一言にいっても、細かいイメージはなかなか記録されていませんし、当時のまま残っている部屋もありませんよね。なので、私が記録や文献等を独自にリサーチして、作ってみた空間です。

── なるほど。たしかに親戚のおじさんの部屋に入ったような、妙にリラックスできる感じがあります。

山下:そうですよね。当時のトレンディドラマでは、新卒社員なのに「家の中に螺旋階段があって、夜景が見えるマンションに住んでいる」という設定をみますが、そうした生活に憧れている人の部屋をイメージして作りました。架空の世界ではありますが、当時存在していたかもしれないというリアルな雰囲気を小物を使って演出しています。

── この部屋には山下さんの収集しているこだわりのアイテムがあると思いますが、それぞれ説明していただけますか?

山下:まずこの部屋の肝になるのが、ガラス瓶ですね。

バブルの雰囲気を体験できるガラス瓶


山下:90年代当時はJ-POPをオルゴール調にアレンジしたり、クリスタルサウンドといって、ガラスを叩いた音で奏でる音楽が、ニューエイジやヒーリングミュージックの亜種のように存在していました。当時のCDジャケットや通販カタログのイメージ写真にもこうしたガラス瓶がモチーフとして多用されていたんです。
部屋のコーディネートを決める上で、バブルの雰囲気を体験できるこのアイテムをキーにしてますね。

── ガラス瓶といった何気ないアイテムの一つにもストーリーがあるんですね。

オルゴールやクリスタルサウンドのCDジャケット写真
現在400枚ほど収集しているオルゴールやクリスタルサウンドのCD


山下:ほかには岩石に埋まったタッチセンサーライトが重要ですね。

岩石に埋まったタッチセンサーライト


山下:バブル期は、とにかく石が流行ったんですよ。特に御影石は、モノトーンに合わせやすく人気でした。そんな石にライトが埋まっているこのアイテムは、私も中学生のときにドラマや雑誌でみて、「これが部屋にあったらモテるんじゃないか」と思った憧れのアイテムだったんですよね。
長年探していたのですが、数年前に岩手のリサイクルショップで見つけました。

タッチすると赤色へ色変
タッチセンサーに触れるとライトの色が変わる仕組み


山下:最後はこの時計です。当時は幾何学模様を組み合わせたモダンなデザインの時計が作られていました。

デザイン重視な幾何学模様を組み合わせたモダンな時計


山下:時間を知るのには不便ですが、視認性よりデザイン重視なところがバブルらしさです。これは地方のファンシーショップでみつけて購入しました。

こちらも時間が分かりづらいデザイン重視のモダン時計
トレンディ部屋にはほかにもモダンな時計が並ぶ


── ここではどのようにリラックスタイムを過ごしているのですか?

山下:ここでは当時の生活に思いを馳せながらリラックスしています。
この部屋もテーマによって変化させてきました。“懐かしい気持ち”をこれからも追い続けていきたいです。


「ファンシー絵みやげ」を文化として保護していきたい

── そもそも山下さんはどのような目的で「ファンシー絵みやげ」の保護活動をしているのですか?

山下:当時の庶民風俗、文化の記録として、「ファンシー絵みやげ」を保護しています。
最初はかわいいデザインに惹かれて、「懐かしいなあ」と軽い気持ちで集めていたのですが、集めていくうちにだんだんと使命感が出てきました。
というのも、今では「ファンシー絵みやげ」と私が名付けましたが、集めはじめた頃はネットで検索しても情報が出てこなかったのです。あれだけ売られていたものが忘れられていることに危機感を感じました。

「ファンシー絵みやげ」について熱く語る山下メロさん


── たしかに、30代以上の方は一度は目にしたことがあるはずなのに、以前はほぼ話題になることすらありませんでしたね。

山下:その民俗学的資料性の高さに気づいてからは、全国を回って集めるようになり、もう10年以上になります。「ファンシー絵みやげ」を2万5,000種類以上を集めましたが、いまも初めて見るものにばかり出会いますので、まだまだすべての保護にはほど遠いのでしょう。

壁ラックにかけられた「ファンシー絵みやげ」
山下メロさんのお気に入りアイテムとston


── リラックス部屋の取材が、まさかこんな文化的なお話まで及ぶとは思いませんでした。本日はありがとうございました!

Writer

高山 諒